表現したい自分が自傷行為になるとき。私のアイデンティティはこうして生まれた

自分の自慰行為動画を発信する若い女性たち

私の起業当初は今と違って、自撮りの見せ方といった技術的なことを提供していました。その頃に、世間（もっと若い世代）では「自撮り」というワードがどのように扱われているだろうと調べていたことがあったんです。今ではコスプレイヤーさんの自己表現的なニュアンスで使われていることが多いようですが、4年ほど前までは、twitterで「自撮り」と検索すると、ほぼ若い女の子の自慰行為動画が表示されていました。自分で撮影したものを自分でアップする、セルフィーセクシャル動画ですね。

その頃は私も今のように、それがどういった心理現象を指すのかと分析する器じゃなかったものですから、Facebookとのあまりの感覚の違いにとても驚き、ショックを受けて、しばらくこの世界には触れないよう蓋をしていたんです。ですが、最近調べている、セクシャルな世界観で自己表現活動をしている50代の女性がおり、その方の記事にこのように書かれていたことが、私もこの領域と再度向き合ってみようという気持ちにさせました。

20代の頃にもセルフでヌード撮影をしたことがあったが、そのときは、プリントした写真を衆目のもとに晒す＝自分の裸体を晒すという意識が強く働き、セルフヌード撮影が、自傷行為のようであった

閉経することで生まれた「マキエマキ」という存在

だけど今は”自分が死ぬまで女であることを意識し続けるための作業”としてこの表現を続けている

閉経することで生まれた「マキエマキ」という存在

私は今、”自分を表現する”という生き方について教えていますが、「自己表現だから、自分が表現したいことを表現したいように表現して良いんですよね？」「私は今これを出したいから、何でも構わずアップします」と仰る方がよくおられます。

今これを表現したい！という気持ちに、そのまま応じて行動することが、全て悪いわけではありません。むしろそうしたことで、どんな事が起こるのかを身を以て体験するという意味では、結果が一つ一つ明らかになるわけですから、確かな検証になり得るかもしれません。

ですが、私が最も大切だと考えるのは、「なぜその自分を出したいと思うのか？人に見てもらいたいと思うのか？」というもっと根源的な感情と向き合い、自分の中にどんな自分がいるのかを知っていくことにあります。

自慰行為動画をアップする女の子のコメント欄には、卑猥な言葉で盛り立てる男性のコメントがたくさん貼り付いていました。自分の行為を誰かに見てもらうことで得られる快感があったのかもしれませんが、彼女たちの「こんな自分を出す」行為が、彼女たちの中にあるどんな感情を満たしているのかということなんです。

自分よりも輝いているものを前にして、自分が輝くのを諦めた

少し昔の話をさせてください。

数年前に私は、”歌プロ”という、歌で自分を表現するプログラムに参加したことがありました。そのプログラムは何度か歌のレッスンを受けて、曲目や衣装などのプロデュースを受けて、実際に生バンドの演奏でライブのステージに立つというものでした。

大学時代にヘヴィメタルバンドをやっていた経験から、人前で歌うことに抵抗はなく、むしろ大好きな活動だったんです。だけどそれを辞めてしまったのは、夫との出会いがきっかけにありました。夫の才能に屈したと言いますか、彼と出会った時に、初めて才能というものに惹かれた気がしたんです。自分よりも輝いているものを前にして、自分が輝くのを諦めた感じがしました。